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生まれつき悪くない視力がまずとらえたのは黄色い見たことの無い鳥だった。
まんまるのなんとも愛らしいその鳥は青い空の中ではとてもよくめだっていた。 目でそれを追いかけていると、急に鳥は急降下をしていって、ある人物の頭の上におさまる。 その姿を見て思わずぎょっとして、見つめてしまった。 外を歩いていたのは並盛中で…いや、並盛で知らない人はいないというような男、雲雀恭弥であった。 あの男にさからってはいけない。一般生徒である零にとっては恐ろしい存在でり、極力さけてきた相手だった。 学ランを見ようものなら避ける。 そうやって過ごしてきたものだから、自然とかかわらないようにといろんな情報が集まっていた。 そんな人物が今、窓の外で黄色い鳥を頭にのせて歩いているのだから不思議な光景である。 一瞬あの鳥すら犠牲になるのでは、と思ったがどうやら気にしてはいないようで、 もしやあの鳥は雲雀恭弥が飼っているのではないかと思う。 不意にその人物が振り返った。零は、今までにないほどその姿を見ていた。 遠くからならバレないであろうという余裕もあって、遠くだが、それでも眺めていると、 やはり見た目は噂されてるように、かっこいいんだな、と思う。 遠めからでもわかるほど、とても整った顔立ちをしている。 というよりかもしだす雰囲気…威圧感かもしれないが、それがすでに常人とは違う。 雲雀恭弥が歩いていった先には授業をサボりたむろする… これも関わりをもちたくないいわゆる不良というやつらだが、 そいつらがいかにも不良っぽく座っていた。 それを狙っていたのか、雲雀恭弥は早い歩行でそいつらに近づいていく。 そして、その存在に気づき怯える不良の姿が一瞬見えて…私の背中に一気に寒気がはしった。 本当に恐ろしい人物だ、と再確認する。 関わりたくないと思いながら見ていると、その本人が不意に、校舎を見た。 視線が私のものとぶつかった。いや、わからなかった。 思わず顔を黒板へと背ける。顔から血の気が引いていく。 あれ、いま、私目があっただろう、か。私の視線に気づいて、 雲雀恭弥がこっちを見たということだろうか? いや、まさかそんな常人離れしたこと…いや、先ほど自分で常人とは違うと言ったばかりか。 いやだが…一人首を縦に振ったり横に振ったりしていると、 隣の席に座る沢田が顔色がよくないよ、と不振気味に、 というか引き気味声をかけてきたが、大丈夫、と説得性がないとわかっていながらも無理矢理笑ってかえす。この沢田も私の仲では関わりをあまり持ちたくない人物だった。京子はいい人だという。まあそれは知っている。だがトラブルメーカーだと思っている。野球部の山本は不良獄寺に慕われていたりダメツナなんて呼ばれていたりよくわからない。それになんだかんだで問題を起こしている。 ただ、ダメツナは違う、と思う。隣の席という接点しかないが、ぼんやりとそうんなことを感じていた。 そういえば、沢田は雲雀恭弥と…親しいわけではないようだが、 なんだか追われているところをよく見かける気がする。

「ねえ沢田」
「う、うん、何?」
「雲雀恭弥ってどんな人?よく、追いかけられてるでしょ」
「ひ、雲雀さん?うん、まあ…怖いけど、頼りになる人だよ、味方だと…」
「味方?」
「あ、いや、別に!」

急に口ごもった沢田は何かを隠していることがバレバレだったけれど、追求しないでおいた。 やはり変な奴だと思ったけれど。そして頭の中ではやはり、 目が合ったときのことが思い浮かんでいた。だが、すぐにそれを打ち消す。 ただ、目が合っただけ。いや、実際はあってないのかもしれない。 もしかしたら向こうは違うところを見ていたかもしれないし…そう、それが一番いい。 何もなかったという勘違いであってほしいと思った。






授業が終わると、ようやく昼休みで、隣の席の沢田はお弁当を持って獄寺や山本とともに教室を出て行った。 屋上でそのメンバーが食べていることは知っている。 いい場所とったなぁとも思うのだが、冬の時期にまでそこに行くのはさすがに寒いだろうなどと考える。 でも毎日行っているのだから支障はないのだろう。 そこで自分の腹がきゅっと縮まって空腹を訴えはじめたことに気づき、鞄からお弁当をとりだした。 すると、同じようにお弁当をもった京子が、先ほどまで沢田が座っていた席に。 花が前の空いている席に座る。

「お腹すいたねー」
「あんたいま凄いぼんやりしてたけど、どうかした?」
「…ううん、なんでもない」

三人で机をくっつけて、お弁当をひろげる。お昼はたいていこのメンバーでいつも食べている。 零にとっては二人とも気が合うし、変な気をつかわなくてもいい気が楽な友達だった。 少し大人っぽい花は頼りになるし、学校の中でもとても人気のある京子は見てるだけで目の保養。 性格も本当にかわいらしく眩しい笑顔にいつもときめかさせる(これ本当) いま京子が座っている席の主もそんな彼女が好きなようだ。(見ているだけでバレバレだったりする) いつも彼女がこの席に座っていることを教えてやったら喜ぶだろうか。

零、授業中ずっと窓の外見てたでしょ、何か面白いものでもあったの?」
「えっ、あ、見てた…?」
「うん。だって凄い真剣に外見てたから、気になっちゃって。先生も気づいてたよーきっと」
「全くあんたは…さっきもぼーっとしてたし、本当どうかした?」
「え、いや、うん。まあちょっとねーあ、今日の花のお弁当かわいいね!」

私が話をそらすと、京子はほんとだーといってのってきたが、花は疑わしげな視線を向けた。 さすがにあからさますぎたようだ。だが、触れられたくないと察してか、 それ以上は追求してこなかった。別に、言ってはいけないこと、というわけではなかったのだけど。 なんとなく話したいとは思わなかった。このまま一日が過ぎ去って、 明日には忘れてしまえばいい、自分の中でだけの出来事にして、 今日も何もない一日だったと、言えればいい。

「花、から揚げ食べないんならちょーだい」
「ああ、ほら。ったく…揚げ物はいらないって言ってるのに」
「そんな気にしなくても十分平気だと思うけど…ありがと」

差し出されたお弁当からから揚げを取ろうと手を伸ばしたとき、 机の端っこに置いてあった水筒にゴン、とひじがぶつかった。 あ、やばいと思ったときすでに遅く、倒れた水筒は容赦なく制服にお茶をこぼした。

「ぎゃあ!あ、あつっ!いや、熱くない…や、半端に熱っ!」
「わ、大丈夫!?今タオル持ってくる!」
「ほらハンカチ、やけどしてない?」
「そんなに熱くしてこなかったし…あー制服が…。 あたしちょっとトイレ行ってくるよ、ジャージに着替えてくる」

京子が持ってきてくれたタオルを受け取って、席ををたった。 熱かったお茶は一瞬で、ワイシャツにまでしみていたお茶は今はただの水となっていて冷たいことこのうえない。 ジャージとタオルを持って教室へ出て、急ぎ足で一番近くのトイレへ向かう。 昼休みはもう半分をきっていたので、早く着替えて教室に戻らないとお弁当が食べ終わらない。 歩くたびにはりついてくるワイシャツが気持ち悪い上冷たかった。 廊下は教室よりさらに気温が低いので、まるで腹に氷を当てているような気分だ。 調子が悪いときすぐにお腹が痛くなるという持病もちなので、 このままほっとくと腹痛にさいなまれながら授業をうけることになるのではないかと経験から予想できる。 ああ、それは嫌だ。早く、とバタバタと廊下を走り急いでいると、 とてもよくある展開で曲がり角で人にぶつかった。 それも勢いよく。かわいくない悲鳴が口からでて(これはしょうがない) 思わずしりもちをついて目を開けば、現代にはなかなかありえない学ランにリーゼント姿の青年。 校内でこんな格好をするのは風紀委員のみ、本日二度目の顔から血の気が引いていくのがわかる。 いたいけな女子がぶつかっただけだというのに、機嫌が悪いのかリーゼントは随分の睨んでいるし。 他の通行人は顔をそむけるし。他人とはいえ白状過ぎる。私も同じ境遇だったらそうするだろうということはわかってはいるが。

「おい、いてえじゃねえか」
「…す、みません!(こいつらもろ不良じゃないか!)」
「風紀委員にぶつかっといてそれですむと思ってんのか?」

こいつらは所謂、風紀委員という名をいいようにしているのだろう。 バックに雲雀恭弥がいる風紀委員には、皆一目おいている。いわば単なる不良だ。 なのに、よりによってそんなたちの悪いやつらにぶつかってしまうとは…。 上から罵声がとんできて、ずっと同じようなことを言っている。 誤って駄目なら何をしろというのだろう。どこか冷静に考えながらも、この場を切り抜ける方法を考えていた。 そうしてい間にも腹は冷えていって思わず身震いした。 それをいいように勘違いしたのか風紀委員はさらに調子にのる。 こんなもどきに恐怖などは覚えなかったが、逃げたくとも逃げられず、 どうしようこの状況…困っていると、そいつの後ろを見て私は思わず目を見開いた。 今度こそ本当に恐怖が心でうずく。

「校内で…何大声出してるの?」

構えたトンファーを一振りした雲雀恭弥は、風紀委員を容赦なく叩きのめした。 それこそ、今まで見たこと無いほどの至近距離だった。切れ長の鋭い目に、とんでもない威圧感。 けれど普通なら騒がれるであろう容姿を思わず見ていると、その瞳が自分のものと重なった。 というか、睨まれた。

「何見てるの」
「い、え…と、失礼しました!」

今すぐ私も叩きのめされそうな雰囲気だったことを察知して、 一礼してくるりと向きを帰ると、トイレとは逆方向にダッシュした。 その勢いのまま教室に戻ると、むわっとした暖かい空気に包まれる。 たいした距離でもないのに少し呼吸を乱しながら、自分の席に座る。

「ちょ、息きらしたりして…ってあんた、着替えてないじゃない!」

花と京子が顔をのぞきこませてきたが、なんでもない、と首を振ることしかできなかった。 目が合ったのは、やはり思い違いかもしれない。かかわりたくない、と思っていた。 そもそも、かかわりたくないのに知ろうとしていることから矛盾していた。 いたからこそ、見つければ避けて、会わないようにと、ずっと気を配っていた。 が、その中には、恐怖という感情だけではなかったらしい。
もとより、意識していたのは自分だったのだ。





この感情を手にとって





(20090106)
また続きそうで続かなそうな話
タイトルはエナメルさんからお借りしました。